無期懲役囚と中高生の文通【女子高生サヤカが学んだ「1万人に1人」の勉強法】

            <p>     したい人、10000人。始める人、100人。続ける人、1人。</p>

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     普通の主婦が、人を殺めて服役中の無期懲役囚と文通をする。しかも中学生の息子と高校生の娘もまじえて文通を勧めて、その無期懲役囚から勉強方法や運動の仕方などをはじめ、様々な生き方を教えてもらうーー
    本書【女子高生サヤカが学んだ「1万人に1人」の勉強法: 知的すぎる無期懲役囚から教わった99.99%の人がやらない成功法則】は、今時の自己啓発本としては珍しく、「成功するには地道に続けること」「人生にはやらなくてはならないことも根気よくやる必要がある」「99.99パーセントの人は自分に甘い」など、泥臭く期待を持たせるような甘っちょろい本とは、確実に一線を画している。

    著者の美達大和氏は、はっきりとした経歴は謎に包まれており、ネットなどで載っている情報も確実に正しいとは言えない。だが、この書籍情報によれば、以下の通り。


1959年生まれ。
刑期8年以上で、犯罪傾向の進んだ受刑者を収容する「LB級刑務所」に
服役中の無期懲役囚。
罪状は2件の殺人。仮釈放を放棄している。

 

    そんな無期懲役囚が医学部志望の受験生の女子高校生と男子中学生と文通をし、様々な勉強法や生き方から、筋肉の付け方や喧嘩の仕方、目を良くする方法など、10代の学生が生活していく上でいろいろな悩み相談や努力のやり方などを非常に論理的な文章で説明していく。タイトル通り知的すぎる無期懲役囚は、丁寧な言葉使いで諭すように、2人の学生に力強くメッセージを送る。
    その内容は決して甘いものではなく、また、語り口はどちらかというと若者向けとなっており(対象が中高生だから当然だが……)大人が読むと、「若い内に読んでおけばよかった」と思わせてしまう部分もある。
    確かにこの本では、美達大和氏が獄中にいるということからも、「大人になっても続けるということをしない」「周りはクズみたいな人間はかりで嫌になります」という辛辣な言葉も投げかけている。そう考えると、読む者がどうであれ、少々息苦しくなるような発言も点在する。なまじ、この本のタイトルから「自分もこの本に書いてある成功法則を学べば10000人に1人の人間になれる!」と思って本書を手に取ると、少なからず耳が痛い内容もある。
「もう自分はこの本に出てくる中高生みたいに若くないから、結局やっても意味がないのか……」
    しかし、どの自己啓発本にも言えることだが、何も本に書いてあることすべてに影響を受ける必要はないし、鵜呑みにすることもない。実際に、この本は単なる根性論だけでなく、以下のような持論も併せ持つ。一部を紹介してみよう。

 

・自信は自分の存在に持つものではない。自信を持つ対象は、自分が何かに取り組み続けたという、自分の心と行動に持つものです。

・はじめから、あるいはうまれながらにして、強固な意志をもつ人はいません。みんな、自分で、苦しんだり、悩んだり、己を叱ったりして強い意志をつくるのです。

・ずばり友人をかばうための嘘はOKです。他人を思いやるために嘘は悪くありません。嘘でいけないのは自分を守るための嘘、本当に自分を守るためだけの「ごまかし」です。これはダメです、人間が腐ります。

 

    その他、人間が生きていく上で“続けていくこと”の重要性や、自分を裏切らないことの大切さを書いているが、受験や体の鍛え方など、若い内に未来を作り上げていく基礎的要素以外の、生きていく上で本当の意味で必要なことは、むしろ大人になってから身につけていくことによって初めて自分のものに出来るものだと、私は思っている。
    経験をして身につけていかないと、人は結局誰にどんな説得力のある言葉を得ても、ただの言葉としてでしか受け取らないと思う。だから、このような大事な言葉が書いてある本でも、半ば娯楽的な意味で楽しむのも一つの生き方だとは思うし、むしろ失敗を繰り返しながら生きていくのが、本当の自分の哲学になるだろうし、何より人間らしい。だから、本書を読んで成功していないことや自分の若い頃を悔やむ必要はないと思う。
    むしろエッセイ的な構成になっているところに本書の面白さがある。殺人から自己鍛錬まで自他共に認めるほどに極端な人生を送ってきた美達氏が、どのように娑婆の中高生と文通をしているのか、そのやり取りをみるだけでも楽しめる。どのような書籍でもそうだが、間に受け過ぎたりのめり込み過ぎたりせずに、自分に出来そうなところだけ吸収して、少しずつ何かを続けていき、自分の経験を積んでいけば、きっと本当の意味でその人にとっての人生が成功出来るものになると言えるだろう。