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・本当の意味の真面目さ
・お金について考えること
・日本をダメにする清貧の思想
・人はただ生きているだけで価値がある
・etc...
本書は、まさにタイトル通り、投資に関するノウハウや失敗しないやり方などではなく、人生全体を、お金という概念を中心にしつつも、詳しく解説している。
これを読めば、いかに我々日本人がお金に対して盲目的で、不真面目で、何も考えていないことがわかる。
例えば、数々の企業やNPOに属してきた私の経験則でも、経営者や責任者は口癖のように言う。
「カネがない」
私は、それに対して必ずと言っていいほどこう思う(チキンなので思うだけで終わることが多いが)。
「それは、そのことに費やすためのカネがないだけで、本当に財布や通帳や金庫の中にカネが入っていないわけじゃないだろ」
と。
実際そういうパターンが非常に多い。
何が言いたいかと言うと、個人から経営者まで、自分の娯楽や息抜きや、ノーリスクの投資の為には金を惜しまない癖に、「お前にやる金はない」とか「そんな事業展開していく金はない」と、誰も彼もが心底感じている。
まさに、人を信用しない、心の狭い人間の集まりなのである。
しかも、悲しいことに、そういう人間は本当の意味の成功者でない場合が多い。
例えば、最近増えているようだが、若者達の間では
・年収2000万だけど休みがない
・年収400万だけど完全週休二日制で残業なし
この場合、後者を選ぶ若者が増えているそうだ。
しかしこれは、今の日本の経営や社会に即して考えるにあたって、至極真っ当な考えだ。
何故かというと、今の日本の経営者は、例え金や地位や家庭を持っていても、幸せそうに見える人があまりいないから。
そして、いたとしても他人を蹴散らしたり部下を顎でこき使ったり、自分とは立場の違う人間を不幸せにするというイメージがあるから(電◯などのブラック大企業などが良い例である)。
しかし、それもこれも全て、誰もがお金に対して不真面目に考えてきた結果なのではないか?
本書も、日本人はお金に対して真面目に考えていないことを指摘しているが、全くその通りであると思う。
何故お金が大好きではいけない?
何故金儲けが悪だと決めつける?
何故大企業神話から抜け出せない?
日本の成長が止まっているのは、まさに一人一人が毒されてしまっていることにある。
もちろん毒された人が悪いのではなく、毒されるという事実そのものが悪いのである。
そこから更に一歩踏み込んで考える。
「ならば毒されないようにするにはどうすれば良いのか」
「自分というものを保つために何が必要か」
「お金は大切だが、お金以上に信じられるものはあるのか」
ちなみに、本書にその答えは載ってない。
ただ、本書の著者である藤野英人氏は、気付かせてくれる。
本当に考える力や、真面目に生きていくための尊さや、きっかけなどを。
何も、今日から株やFXをやろうという話かというのではない(ちなみに、本書には「FX」とか「マネーロンダリング」とか、そう言った単語は一切出てこない)。
ただ、投資というものは何なのか? 投資を行うにあたってお金よりも大切にしなければならないことは何か? それを探すための必要性を問うている。
単なる自己啓発本や投資の教科書と思ったら大間違い。
日本という国で、何故生きにくいと感じる人が増えているのか、そしてお金の話をタブー視する風潮の愚かさが未だにこびりついているのは何故か、自分の人生の中でお金のことを真剣に考えることは何故大切なのかを教えてくれる名著である。
【投資家がお金よりも大切にしていること】
お金は非常に大切だが、その大切なお金という垣根すら乗り越えて、自分の人生に意味を持たせてくれる。
まさにタイトルに偽りなし。