<p>一部読み直した本や、エッセイも合わせて、紹介していきたいと思います。</p>
では早速
・奥田英朗 作【伊良部シリーズ】
出ました、いまだに語り継がれている毒笑小説3部作。
一作目は一般人を中心に、変な病気に悩まされる人がたびたび現れ
二作目は比較的特殊な職業に就く人を背景にして、精神症状の内容はどちらかというとおまけ扱い。
三作目最後の町長選挙以外は現実の著名人をモデルにした患者が織りなすストーリー
となっています。
イン・ザ・プールの、携帯依存症の高校生の物語「フレンズ」と、空中ブランコの、イップスに悩まされるプロ野球選手の話「ホットコーナー」が特に好きで、笑わされるだけでなく、考えさせられます。
・クリストファー・バックリー 作【ニコチン・ウォーズ】
- 作者: クリストファー・バックリー,青木純子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/09/30
- メディア: 文庫
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筒井康隆氏の書く「嫌煙ファシズム」のような作品とはまた違った形で、喫煙者と非喫煙者の違いや、主人公のもとに降りかかる事件事故を、ユーモラスかつアイロニックに書いた秀作。
個人的に「タバコの煙でフロンガスによって破壊されたオゾン層が修復される」の下りはツボにはまりました。
海外小説ながら日本の単語がいくつか登場するのも特徴(「キャンキャン」や「カロウシ」など)。
・中島らも 作【お父さんのバックドロップ】
ダメダメだったりヘンテコだったり、そんなお父さん達が、子供の前でいいところを見せようと奮闘する物語がテーマの短編集。
少しホロリとさせられる面もあるものの、いつもの中島らもさんらしく、ギャグをちょこちょこ入れてはしみったれた雰囲気のドラマにしないような工夫が施されていました。
・土橋章宏 作【超高速! 参勤交代】
突拍子もないタイトルやあらすじから、読む前はギャグ満載のドタバタ劇なのかと思いきや、意外にも勧善懲悪かつ王道なストーリー。そのスピーディな展開やわかりやすすぎるほどの善と悪の対比の構造は、まるで池井戸潤氏の小説を彷彿とさせます。
民を第一に考える優しい殿様と家臣や忍び、悪どい老中とその一味が織りなすお話の、痛快且つ泣けるハートウォーミングな一冊です。映画化もされているようなので、そちらも見てみたいと思います。
・遠藤周作 作【狐狸庵閑談】
自動車教習所の指導員の横柄な態度、延命治療、高齢化社会、日本の教育ーー
現代もなお続く日本の問題やストレス源を、ズバッと斬ってくれて、読むごとにスカッとする、遠藤周作こと狐狸庵先生の晩年のエッセイです。
それにしてもこの時代(1990年代)に「肉食型人間」と「菜食型人間」とは。。とは言っても本書では、今の時代に使われるような意味合いではなく、白人と日本人の対称性という用途で使われていますが。
・有川浩 作【三匹のおっさん】
とにかくカッコイイおっさん達!
「60歳はまだまだおっさんということにしてほしい」
主人公はそう葛藤するが、実際に若い奴らに全然負けてません。数々の事件を解決します。
しかし何度読み返しても、上記のセリフは共感できるものがあります。どの世代からみても、頼れる強さを感じるほどに。
同時に、そんなおっさん達の、孫や娘に訪れる青春劇など、若い読者からみても心を弾ませる内容もあり、その点も充実しています。こういった、ターゲットを絞らない大衆性の高い作品を書くのが、この作者さんは上手いと思います。
・浅田次郎 作【プリズンホテルシリーズ】
通常このテのヤクザをテーマにしたコメディは登場人物がどこかヌけていたり、主人公がわざとらしいほどアンチヒーローっぽかったりするのですが、本シリーズはそういった定型に嵌るだけの展開に留まらず、実に個性豊かな群像劇やトラブル、人間関係に見舞われ、飽きさせない話が満載でした。
最初は、何で1巻目が夏から始まって最後は春で終わるんだろう、と思っていましたが、その真意はーー
主人公(特に最初の方)のクズっぷりと、読んでいくうちにわかるその人間の心の弱さ、ひたむきさ、美しさ。そんな不明瞭なものが一緒くたになって、全力で泣き笑わせてくれます。