原作を尊重したスヌーピーの映画と、原作を分析した心理的解析本

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いつだって、誰かがいてくれる―スヌーピーと仲間たちはこうしている

いつだって、誰かがいてくれる―スヌーピーと仲間たちはこうしている

  • 作者: エイブラハム J.ツワルスキー,チャールズ M.シュルツ,Abraham J. Twerski,Charles M. Schulz,笹野洋子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1995/12
  • メディア: 単行本
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 忙しい毎日から少し解放されて、ようやく今日になって妻と観たかった映画を観に。

 「I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE」は原作を知らない人も、知っている人ならより楽しめる、スタンダードな作りの映画になっていて、スヌーピー好きな僕も妻も共に楽しめた部分が多かった。

 個人的な感想をあえて一つあげるなら

「チャーリーブラウンやスヌーピーは圧倒的に自分より文才あるな……」

 まあスヌーピーはともかく、チャーリーは子供の頃の作者自身の投影なので、ライナスに認められるほどの文章能力をもっているという設定でも決して不自然ではない。

 

 映画の感想はここまでにして。。

 

 さて、今回の書評はチャーリーブラウンとスヌーピー、そして仲間たちがどのように普段暮らしていて、どんな悩みを抱いているのか、本当はどんな性格なのか、ということを事細かに記した本

いつだって、誰かがいてくれる――スヌーピーと仲間たちはこうしている】

 

 おなじみの原作「ピーナッツ」の4コマ漫画部分をはさみながら(コマの端に原文が載っていて、バルーン(吹き出し)の中の文はもちろん日本語に訳されている)作者の論述が掲載されている。その漫画の内容を基に、登場人物の心理や行動を分析し、同時に多くの人が持つ悩みや問題を細かにほぐし、読者に優しく諭すといった内容の本。

 

 今でこそ本屋に行けば、「人生の悩みを解決!」 といった類の本はお店の床が抜けるくらい溢れかえっているが、この本が出版されたのは20年前。その時は、日本で気軽に手に取れるような心理分析本は珍しかったのではないか、と推測できる。

 アメリカ人によって書かれた本だが、やはり日本に上陸するだけのことはあって作者の目の付け所やテキストはもちろんのこと、単純に漫画の部分だけ見ても面白い構成に仕上がっている。

 特に、作者は登場人物の一人であるルーシーに、かなり力を入れてピックアップし、解説している。

 

 何故チャーリーブラウンに対してあれほど辛辣なのか。

 ライナスとの関係について。

 シュローダーに対するアタックと拒絶された時の反応、ついでにそれに対する辟易としたシュローダーの態度と微妙な心の動きに対して。

 

 など。

 

 おそらくその理由は、時代が変わっても、大人になるまで、そしてなってからも人間関係で悩んだことのない人なんて、一人もいないからだ、と思う。

 その中で、ピーナッツの中では飛びぬけて口が悪く性格もねじ曲がっているルーシーという毒舌キャラは格好の分析の的と言えるのだろう。

「こういう困った人があなたの身近にもいるかもしれないけれど、本当は毒を撒き散らかす側の人間もこう考えているんだよ」ということをわかりやすく書いてある。

 

 他にも、逆に、現実で作者が出会った事例などをもとにしてから、キャラを用いて人間の心理をついている部分もある。

 原作ピーナッツからして、片想いの描写が非常に多い漫画ではあるが、そのために恋愛や結婚、家庭をもったうえでの生活問題を取り上げ、現実に当てはめて考えることの出来る文となっている。

 

 現実世界でも、人間が抱くそのような悩みは、今も昔もおそらく尽きることがない。

 

 巷に溢れている新書も良いかも知れないが、時には有名漫画を交えた手に取りやすい詳細な心理解析本に触れてみるのも、新たな自分の発見の契機になりうるだろう。

 簡単に解決できる悩みなら悩みじゃないはずだから。

 

 ……とは言っても現実に生きていると、無理しなくてはならない事態に直面することなんて山ほどあるんですけどね。。。

 そして無理をしてまで何かをやって上手くいくことなどまずない、ということを我々は経験則で知っているはずなのに、何故か毎度毎度やらかしてしまう。

 

 自身の悩み事はもちろんのこと、周りで起きている問題だって自分を知らなければ話にならない。

 そして自分にだけ何か問題があったとしても、それは自分一人の力では解決することはおろか気付くことさえできないことが多いし、苦境を突破するには誰かの力を借りることも多々あるだろう。

 そういう辛い人生を生きていく上で必要なのは、《「いつだって誰かがいてくれる」という真理に基づいた、孤独感に恐れ腐ることのない自分自身を作っていく信念》なのだと思う。